何が危ない?子どものケガ 2006調査結果 


トピックス  事故の原因になりそうな「芽」を見つけておこう

 家庭用シュレッダーで2歳のお子さんがケガをしてしまった事故を受けて、当研究所では特別メールアンケートを実施しました。家庭内に限らず、意外と盲点になっているような事故の原因はないだろうかと、みなさんに周りを見回して考えていただきました。その結果、様々な情報をいただきましたので、ご報告させていただきます。34件いただいた情報の中から15件を抜粋させていただきました。みなさんもぜひご参考になさってください。



やはりキッチンには危険がいっぱい
乳幼児がいる家庭では、子どもが簡単にキッチンに出入りできないようにしておくことが、まず前提でしょう。その上で、以下の事例について、ご注意下さい。

事例1  シンク下の包丁収納ボックス
扉を開け、ケースに収納することで何となく安心してしまいますが、鍵などは付いていないので、子どもでもすぐに開けられる。
研究所より一言…できるだけ手の届かない位置の棚に安全に(地震などが起きても落下してこないよう)収納して下さい。もしくは、シンク下の扉を簡単に開けられないような工夫が必要です。市販のグッズを使ってロックするのも一つの手段ですが、S字フックや輪ゴムを使ってロックすることもできます。いろいろ工夫してみてください。

事例2  炊飯器から出る水蒸気
研究所より一言…水蒸気でやけどをしてしまうケースが非常に多いので、炊飯中には細心の注意が必要です。しかし、電源が入っていないからといって、子どもが簡単に触れるような場所に置いておくと、いざ電源が入っている時にも、子どもが平気だと勘違いして触ってしまうこともあるので、電源が入っていない時も、子どもには「触ってはいけないもの」として、きちんと認識させておいた方がよいでしょう。

事例3  テーブルクロス
引っ張るので上のものが落ちてくる。
研究所より一言…これも乳幼児がいるご家庭では使用しない方が無難でしょう。特に、これからの季節、熱い料理や飲み物などがテーブルにあると、非常に危険です。


これからの季節、暖房器具に注意!

事例4  オイルヒーター
子どもが手を触れてもやけどしない温度ということで、利用されている方も増えていると思いますが「フィンとフィンの間の掃除がしずらくほこりが溜まりやすい」「薄型のため子どもが寄りかかると倒れる」といったトラブルを耳にします。
研究所より一言…暖房器具は「やけど」が心配されますが、こんな事故もあるのですね。一つのモノをいろいろな角度から考えてみることも必要なのだと思います。

事例5  たこ足配線一括化のコンセント
1つで6個くらいのコンセントを管理できるのはたこ足配線防止にもなりますし、節電、落雷などにも予防効果がありますが、一点に集中しているだけに小さな子どもの目には付きやすい様です。
研究所より一言…こういったものは、やはり子どもの目につかないように隠しておかなければならないでしょう。また、たこ足配線ではなくても、コンセントは危険です。特に、乳幼児は、よだれなどで手が濡れていることがあるので、感電してしまう可能性があります。コンセントを隠す工夫も考えましょう。

階段は段差だけでなく、手すりも危険?!

事例6  階段の手すり
階段の手すりの鉄格子の所に子どもの顔が挟まって抜けなくなったことがあります。
入ったからには絶対に抜けれると思ってあごから抜いてみたり頭をちょっと斜めにしてみたり。何とか抜けたのですが、子どもは泣きじゃくるし、私も周りにいて助けてくれた人もとても焦りました。もう少し鉄格子の幅が狭かったらな。と思いました。
研究所より一言…以前、家の階段の手すりと壁の間に挟まってしまったという事例も聞いたことがあります。段差による転落も注意が必要ですが、こういったことにも注意してください。まずは 階段でむやみに遊ばせないことですね。
そして、格子の幅が11cm以上あると、子どもの頭が入ってしまうと考えて、自宅の階段の手すりがどうなっているかチェックしてみましょう。

事例7  学校の階段の手すり
学校の階段の手すりって昔は作りがよくなくて滑らなかったというか滑ったらけがしそうだったけど、いまはきれいで、すーと滑れるからと3階から、2階からと降りるときに子どもたちはすべってる、さすがに上に乗りはしてないが腕で体を支えて・・・この間ははさみやいろいろな物もって・・・大けがしそうだ。
研究所より一言…手すりをただ滑るだけでも危険ですが、何か道具を持っていると、なおさら危険度が高くなりますね。ハサミなどの刃物やホウキなどの棒状のものは当然ですが、ランドセルを背負ったままですと、バランスを崩して、反対側に転落してしまう可能性もあります。小学生にも、おうちの方からきちんとご指導お願い致します。

ただの家具だと思っていたら・・・

事例8  スチールの棚(メタルラック) 1
ぶらさがったりしたら危ない。安定感があまりないので、重たい物を乗せない方が良いと思う。
研究所より一言…ご家庭にメタルラックを設置している方は多いのではないでしょうか?一見、頑丈そうにみえますが、組み立て式のものなどは、安定感がない場合もあります。パーツが緩んでいないかどうかなど、日ごろからチェックしてください。また、耐荷重もきちんとチェックして守りましょう。

事例9  スチールの棚(メタルラック) 2
メタルラックの網の部分に、子どもが立った状態で上から手を突っ込んだあと、そのままの状態で急に座り、抜けなかった手が強い力で挟まれたことがある。すぐに大きな声で泣き出し、手は無事だったが挟み方によっては骨折や脱臼もありえたのではないかと思い、非常に怖い思いをした。
応急処置として、メタルタックの網の部分に子の目が行かないよう、布で覆いをかけてあるが、やはり撤去しないといけないのかも。
研究所より一言…同じくメタルラックの事例です。格子状になっているものには、子どもはどうしても手をつっこんだりしたくなるものです。乳幼児がいらっしゃるご家庭では、やはり目隠しをした方がよいかもしれません。
子どもは狭い場所・小さい穴・細い隙間などに手や指をつっこんだり、頭や首を入れてみたくなってしまう時期があるので、そういう場所が他にもないか、よく家の中を見渡してみることも大切です。



「子ども用」でも油断は禁物

事例10  子ども用食卓いす(木製のいす)
机の部分が動くので、その時に指をはさみそう。特に遊びで、前に持ってきたり、後ろに持ってきたりしていて、ぶらぶら動かしていたら危ないと思う。
研究所より一言…「子ども用」となっている商品は無条件に安心して使っていませんか?もちろん、「子ども用」と謳われているからには、子どものための安全設計がされていて当然のものではありますが、使用法を誤ったり、子どもが想像もしないようなことをしたりすると、やはり危険なものになってしまう可能性は十分あります。小さいお子さんにも、モノの正しい使い方(安全な使い方)をきちんと教えておいてあげましょう。また、子ども用の椅子に座らせたまま、安易に目を離してしまわないように注意してあげてください。

事例11  扇風機の羽が危険だとおもいます。
子どもはどうしても好奇心で扇風機の羽を触りたがります。一応、手が入れられないようにカバーはしてありますが、すぐに外れてしまいそうで、怖いと思います。
研究所より一言…扇風機にしても、暖房器具にしても、子どもがいたずらできないようガードがついていたり、チャイルドロックがついていたりしているので、安全性は高くなってきていると思います。しかし、それだけで100%安全であるとは言えないので、やはり、お子さんたちにも、「触ってはいけない」「近づいてはいけない」「外してはいけない」などの指導が不可欠です。乳幼児のお子さんのママたちには「まだ言葉はわからないし、言っても無駄」と思われてしまうかもしれませんが、真剣な表情で伝えれば、ママの言いたいことを少しずつ理解してくれると思いますので、根気よく話してあげてほしいと思います。


買い物中も、子どもの行動に気をつけて

事例12 スーパーの衣料品売り場等にある、靴下をかけたりする金属の細い棒
展示用の壁から床と水平になるように伸びている、ハンガー掛けです。2歳ぐらいの子どもの目線の高さにも突き出ているために、過って目を突き刺さないかが心配です。金属の棒がむき出しになっている事が多く、商品が掛かっていなくてもそのままの状態にしてある事が多いので、心配です。事故には至った事はありませんでしたが、子どもが振り返った瞬間に目に刺さりそうで何となく不安を感じていました。
研究所より一言…フックやポップなど、商品陳列棚には、危険なパーツがたくさんあります。店内を走りまわったりしないよう、指導が必要です。走り回ったりしていなくても、不意に目にささりそうな不安はありますね。できれば、メーカーやショップの方々にも、検討していただきたい点です。


意外?!こんな危険もある!

事例13 部屋の中のチラシや紙類
子どもが滑って転ぶ可能性があります。
研究所より一言…まさか「紙」が危険であるとは、なかなか思いませんが、たしかに滑って転ぶ可能性は高いですね。整理整頓しておくことが、事故防止につながると思います。また、整理整頓しておくと、災害時に避難する時にも速やかに安全に避難できるでしょう。

事例14 道路脇、排気溝の鉄板柵
転んだ時に、手、足が挟まってしまったら、大変。転んでひざの肉がごっそりと削られてしまった小学生を見たことがある。
研究所より一言…おそろしい事例ですね。第一に、ふざけながら歩かないことを、子どもたちに指導しなければなりません。また、あまりにも隙間が大きいような鉄板柵を見つけた場合は、行政(役所)に報告して改善してもらった方がよいかもしれません。

事例15 使い捨てカメラで感電
 今はデジタルカメラが普及してきましたので、以前より台数は少なくなっていると思うのですが、観光地などではまだまだ使い捨てカメラが売られています。
 家族連れで観光地に行き、記念にと使い捨てカメラを購入して、撮影して自宅に持って帰って現像せずに保管していて、それを幼児などがいたずらして紙製のカバーが剥がれてしまい、ストロボ部分に直接手などが触れた場合、最高15,000ポルトの電流が身体に流れ、幼児や小学生であれば、ショックで気絶することもあります。
研究所より一言…電流が何ボルト流れてしまうかについては、研究所で確認することはできませんでしたが、確かに、1989年に香川県高松市で、小学5年生男児が、近くの友人宅で使い捨てカメラを分解していたところ、感電し軽い火傷を負ったという事故があったようです。この男児はフィルムを取り出そうとしていたそうです。使い捨てカメラは、紙製のカバーも、プラスチックの本体も、幼児でも破壊することが可能なので、幼児の手の届かない場所に保管するようにしてください。


おわりに

親子で “考える癖” が大切

  さて、みなさまから様々な情報を得ることができましが、ここにご紹介した事例はほんの一部にすぎません。子どもにとって危険なものは何か、挙げればキリがないでしょう。
 大切なことは、事故防止のために、いくつかの対策を何重にも重ねておくということです。まずは、なるべく目を離さないようにする、屋外では手をつなぐなどが、第一の対策でしょう。しかし、これだけで安心してはいけません。お子さん自身にも、きちんと言い聞かせておかなければなりません。そして、その上で、物理的に防げるような対策を個人で、家族で、もしくは、まちづくり単位で考えていかなければならないと思います。

 そして、もう一つ。「事故防止のために、なんでもかんでも、危険を取り除くということは、子どもの成長において好ましくない。子どもは、小さなケガなどを経験しながら、自分で危険を学んで成長していくものだ」というご意見をよくいただきます。たしかに、小さなケガで済めば、次に大きなケガをしないような教訓になるかもしれません。しかし、どの程度小さなケガならさせてもよいか、という線引きは難しいと思います。だからといって、「どんな小さなケガもさせないように、大人の手で子どもを守らなければならない」と私たちは考えているのではありません。子どもたちにも「想像力」を働かせて、考えてもらいたいと思っています。大人たちに「あーしちゃいけない、こーしちゃいけない」と言われるがままに行動するのではなく、子どもが自分自身で、危険を察知して、回避していけるような人間に育ってほしいと思っています。
 そのためには、幼い頃から、想像力を養うということが重要でしょう。私たちは、想像力も子どもの危険回避能力の一つであると考えています。ですから、お子さんが小さいうちから、親子で、「いろいろなことについて考える癖」をつけていくことをおすすめしています。なんでもよいのです。普段使っているモノについて、一日一つでよいので、「このモノは、どんなところが便利で、どんなところが危ないかな?」ということを親子で簡単に意見を出し合ってみてはいかがでしょう?


参考資料
子ども事故予防センター
子どもの危険回避研究所の所長(よこや)と副所長(にしえ)が、池袋保健所内にある「子ども事故予防センター」をレポートしたトピックスです。ここを見学すれば、子どもたちが巻き込まれるトラブルについて、いろいろな情報を得ることができます。