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ミッシングチルドレン(秋永雅子)


 さっきまで、そこら辺で遊んでいた子どもが見えなくなる。前を歩いていた子の姿が角を曲がったとたん消えている。昔の日本で信じられていた「神隠し」は、現在の米国では決しておとぎ話ではなく現実の話だ

 行方不明の子どもは、全米で年間100万人にも上る。家出、迷子、誘拐、災害による消息不明などをひっくるめ、行方のわからなくなった子どもたちはすべて「ミッシングチルドレン」と呼ばれる。
  カリフォルニア州でもこのほどミッシングチルドレンに関する新しい統計がでたが、これによると子どもの行方不明は13万605件(1997年)と報告されている。状況の内訳は、家出12万180件を除けば、見知らぬ他人による誘拐が81件、同状況の疑いがあるもの948件、両親などの身内の者による誘拐2千793件などとなっている。また、約9万件は家に戻っていることが確認されているが、死体で発見されたものが120件あるという。

 ミッシングチルドレンの一つとして、離婚した両親のどちらかが無断で子どもを連れ去ってしまうケースが増加し、問題になっている。  両親によって引き起こされた誘拐は35万4千100件(1998年)にも上り、最も多く被害者となる年齢は3歳から10歳だという。連れ去った犯人が両親だからといって安心だというわけではない。

  行方不明者関連団体「Stolen Children Information Exchange」が指摘するところによると、両親による誘拐は「決して愛情からではなく、相手の親に対する仕返しの気持ち」が原因のことが多い。誘拐者の90%は感情的にバランスを欠いており、暴力を振るうアルコール中毒者であることも報告されている。さらに連れ去られていた間子どもの多くは性的虐待を受けているという。

 一方、見知らぬ他人による誘拐では主に性に関する目的が多い。身代金目的の営利誘拐は少なく、17歳以下の4万人が売春斡旋業、性的変質者、ポルノ映画・写真製作業者などに売り渡されていると、関係機関は推測する。また、そのうちの少なくとも2万5千人(別の調査では5万人ともいわれる)が海外の闇市場で取り引きされているという。


 ミッシングチルドレン捜査では、もちろん法執行機関が全力を尽くすが、それ以外にも捜査を主力に行う民間団体が創立され活動を行っている。中の一つ「National Missing Children's Locate Center」(NMCLC)は海外へリンクを張り、行方不明となった子どもたちの写真を週に25万枚配布、また公聴会、ダイレクトメール、新聞広告などを通して、一般への協力を呼びかける。また救助犬、捜査犬を使った捜査では、海外機関とも連携し、海外での捜査に全力を挙げる。最近では、インターネットの普及により、ウェブサイトを通じて、法執行機関を始めとする各機関との連絡を密にしている。
 また、別の団体「Nation's Missing Children Organization」では、「子どもを守るためのヒント」として、次のような事項をリストアップし、子どもに徹底して教えるよう親に指導を行っている。

  • 子どもが幼児の場合でも自分のフルネーム、住所、電話番号が言える。また公衆電話からコレクトコールがかけられる。
  • 911のような緊急電話番号を常に見えるところに貼っておく。911に電話をかけられる。
  • 子どもが一人で留守番をする時は、訪問者があっても決してドアを開けさせない。
  • 遊んだり、学校へ出かける時には、必ず友達同士で。決して一人では行動させない。
  • 見知らぬ大人には決して話しかけないよう。話しかけられたら答えないを徹底。
  • 見知らぬ他人が近づき、暴力的なしぐさをしようとしたら、大声をあげ走って逃げる。
  • 見知らぬ車に近寄らない。車が近づいてきたら、車の進行方向とは反対方向へ走って逃げる。
  • 体のどの部分も子ども自身の大切なものであり、決して見知らぬ他人に触らせてはいけない


 ミッシングチルドレンの捜査活動を守る法律が幾つか成立、発効されている。行方不明者の完璧な情報をFBIコンピューターへの入力を奨励するThe Missing Children Act(1982)行方不明者の目撃情報を集めるための無料電話ラインの開設、法執行機関への技術援助提供などを求めるThe Missing Children's Assistance Act(1984)といった連邦法を始めとする多くの法律が、全米、海外で行われる捜査関連活動全てを擁護、支援していく。