「子どもの危険回避研究所」設立のごあいさつ 所長 よこや まり

 私はこわがりです。小学校の頃は、自転車は公園でしか乗ってはいけないと言われていました。公園までは自転車を押して行くのです。
 結婚するまでは「もし人をひいたら、(キリスト教の)シスターになるって言いそうだから 車の免許は取ってはいけない」と父に言われて、ちょっと不満を感じながらも、言われたとおりにして育ちました。
 なので、とってもこわがりです。
 では、私の子ども達はどうでしょう? 子ども達は近所の子の移動が自転車だから、自転車はどうしても必要だと言います。なので、練習して乗るようになりました。

 でも、私は子どもが自転車ででかけるのが心配でしょうがなかったのです。ふと近所でみかけると、友達とスピードを出していたり、こけてきたりします。
 大きくなってくると、自転車で友達と遠くまででかけるプランが持ちあがりました。自分が苦手なので、どうアドバイスしていいかわかりません。おまけにちょうどそれは私が手術をして入院していた時期だったので、なんとかあきらめてくれる方法はないかと考えていました。
 同じ病室の先輩ママには「男の子の親だったら、通らなくちゃいけない道よ」と励まされました。
 どうしましょう。。

 そんな時、息子は一緒に行くつもりの友人のおとうさんに呼ばれて、こんな約束をしたと報告してきました。

まず、どの道を通るのか、地図とスケジュール表を作ること
目的地に着いたら、電話をしてくること
途中で何かトラブルがあったら、無理をせずに、交番に相談して自転車を預かってもらって、電車で帰ってくること

 これをきちんと守ったらだいじょうぶだって。約束するから、行かせてくれ。と目を輝かせています。
 私は感激しました。そういう指導をすればどれだけ危険を減らせるでしょう。
 子どもにはチャレンジさせた方がいいのは分かっていたのです。その道を作ってくれた友達のおとうさんに心から感謝しました。わざわざうちの子を呼んで一緒に話してくれた心遣いにも頭が下がる思いがしました。
 そうして、地図を作って、何度か打ち合わせをした後、往復8時間のツーリングに行って帰ってきた息子は一回り大きく成長したような気がします。

 母親はたいていとても心配性です。危ないことはやめさせたいと思うでしょう。
 でも、その時々に、その子に見合ったアドバイスができれば、きっと今後生きていくために、自立するために、チャレンジした方がいいことは多いでしょう。

 私たちは、そういうアドバイスができるように、親子で考える機会と情報を提供できる場を作りたい、そんな思いでこの「子どもの危険回避研究所」を作りました。

 今、私は子どもの自転車用のヘルメットを研究中です。ヘルメットなんてカッコ悪いから嫌という子ども達がもうちょっと自然にかぶれるものを作れないかな?と思案するのが楽しいのです。

 私は9年前から商品研究の論文を書いています。
 最初は「抗菌防臭加工」って本当に効果あるの?という疑問から、友達と研究を始めました。
 そして2つの賞をいただいてから、家族の、特に子どもの役にたつものを研究してきました。
 7年前には消防士さんの使う難燃素材の中から良いものを選んで「子ども用の防災スーツ」を作りました。
 5年前には「学校の上履き」を研究しました。子どもがひざを痛めたことがきっかけですから本気で調べました。でも興味のあることなので、研究は楽しいです。良いものを探し当てたり、つきつめていくと宝探しをしているような気分になります。
防災スーツ 上履きの研究

 そして、研究を通じて知ったことの中にはみんなにも知って欲しいな!と思うことがたくさんあります。

 学校や園で使う防災頭巾に、かわいいお手製のカバーをかけていませんか?
 せっかくの難燃素材の頭巾に綿のカバーをかけると効果は減少します。
 火の粉が乗った場合、綿は燃えます。火が燃え広がると、密着している頭巾にも火がついてしまいます。そして難燃素材に一旦火がついたら、火の勢いが強くなった場合、毒ガスが出ることがあるのです。

 学校の上履きは、何となく決められたものを使っていませんか?
 実は上履きにもたくさんの種類があります。底の薄いものは、体育館で使う場合には特に不向きです。底の薄い靴で激しい運動をすると、貧血になる可能性もあるようです。また、きついものや大きすぎるものを履かせていると、子どもの足が変形したり、ケガをしやすかったりします。

 色々疑問に思うこと、不安に思うことの正体を見極めて、それを改善する道を考えることは生きていくために必要なことだな、と経験を通じて思いました。

 そんな私の長年の夢だった「子どもの危険回避研究所」を立ち上げることができて、今とてもハッピーです。友達と、そして子ども達とあれこれ考えながら、充実したページになるよう努力していきます。

 遠くの人と一緒に相談し合うのもずいぶん楽になりました。
 インターネットを使えば、情報は最新のものを集めることができるでしょう。
 どうか皆さんも、「こんなことが不安なんだけど」「こんな危ないことがあった、みんな気をつけて!」ということがあったら教えてください。
一緒に、楽しく「危険回避」について考えていきましょう! 1999年6月25日